筋肉を増やすための効果的な筋トレを行うには、適切な栄養摂取が不可欠です。その中でも炭水化物はエネルギー源として重要な役割を果たし、筋肉の合成を最大化するために欠かせない栄養素です。
そこでこの記事では、初心者でも理解しやすいように最適な炭水化物の摂取量と摂取タイミングについて詳しく解説します。
この記事を読み進めることで、適切な炭水化物の摂取方法が明確になり、さらなる筋トレ効果向上の手助けとなるでしょう。
目次
筋トレをするなら炭水化物が必要な理由
筋トレと炭水化物の相互関係に迫ってみましょう。以下の項目を読むことで、炭水化物の重要性が明らかになります。
それでは、早速見ていきましょう。
筋トレのパフォーマンス低下
エネルギー不足が生じると炭水化物の供給が不十分になり、筋トレ中のパフォーマンスが低下するリスクが高まります。
炭水化物は筋肉を運動させる際の主要なエネルギー源となります。特に高強度な運動を行う際には、糖の分解によるエネルギーが欠かせません。
エネルギーが不足すると、適切な筋力を発揮することが難しくなり、重量を持ち上げたり持続的な運動を行ったりする能力に支障が出る可能性があります。同時に疲労が早く訪れるため、トレーニングの効果も減少するかもしれません。
以下は、トレーニング前に炭水化物の摂取が行われた研究の一例です。
※プレセボは「プラシーボ効果」というものを指します。プラシーボ効果とは、実は効果のない薬や治療をもらっていると思い込むと、その思い込みだけで体調が良くなることがあるという現象を表す言葉です。
- トレーニング経験ありの20歳前後の男性を対象。
- ベンチプレス、ベントオーバーロー、アームカールなどの最終セットにおける回数が増加。
研究から、トレーニング前に炭水化物を摂取することで持久力が向上し、総回数が増加することが示されています。そのためトレーニング前に適切な量の炭水化物を摂取することは、筋トレにおけるパフォーマンス向上に繋がるでしょう。
炭水化物は筋トレにとって極めて重要な栄養素です。その役割を十分に理解し、適切なタイミングで摂取することが効果的なトレーニングと成果の達成に繋がるでしょう。
筋肉量が減少する
筋トレを始める際には、炭水化物の摂取が非常に重要です。その理由は、エネルギー不足が生じると筋肉の減少リスクが高まる可能性があるからです。
では、エネルギー不足が筋肉を減少させる過程はどのようなものでしょうか。画像を使用して詳しく解説します。
筋肉は、適切な刺激と栄養摂取によって成長します。しかし、運動中に使われる主なエネルギー源は炭水化物です。
炭水化物を十分に摂取しないと、体はエネルギー源としてアミノ酸に頼ることになります。この過程でアミノ酸が減少し、筋肉がカタボリック(分解)されてアミノ酸を補充する動きが生じます。これが続くと、筋肉量が減少してしまうのです。
したがって積極的に炭水化物を摂取し、筋肉を保護することが必要です。
エネルギー源の炭水化物が不足すると、アミノ酸を補充するために筋肉を分解します。
適切な炭水化物の摂取量
次に、適切な炭水化物の摂取量について説明します。以下の項目は、バルクアップ(筋肉量を増やす)したい人とダイエットをしたい人の両方に対する効果的な炭水化物摂取方法を詳細に解説します。
是非、参考にしてみてください。
バルクアップをしたい人
バルクアップとは、筋肉を増やすことを目指すトレーニングプログラムを指します。この場合、炭水化物の摂取量は全体のカロリー摂取量の55~60%になるよう心がけることが推奨されます。
炭水化物を多めに摂ることで、インスリンというホルモンが分泌されるので筋肉の成長に非常に効果的です。インスリンは、糖分や炭水化物が体内に取り込まれる際に関与するホルモンであり、筋肉の細胞内に栄養素を送り込む役割を果たします。
例えば、日々の摂取カロリーが合計で3000kcalの場合、そのうち55~60%に当たる1655kcal~1800kcalを炭水化物から摂ることが望ましいです。
この場合、炭水化物1gあたり4kcalとされているため、必要な炭水化物の量は414g~450gになります。
- 最小値(414g)の場合: 414÷55=7.53杯
- 最大値(450g)の場合: 450÷55=8.18杯
※ご飯1杯(約150g)あたりの炭水化物の量は55g程度とされています。
ご飯茶碗で表すと、1日におおよそ7~8杯分の摂取量になります。これは朝昼晩といった主食の3食だけでなく、間食の際にも適切に炭水化物を摂ることが重要です。
また炭水化物だけでなく、タンパク質と脂質のバランスも大切に考慮する必要があります。バルクアップの際は、タンパク質を25~30%、脂質を15%の摂取を目標として心がけましょう。
バルクアップをするためには、通常よりも多くの炭水化物を摂取することが大切です。
ダイエットをする人
ダイエット方法には、脂質制限と糖質制限がありますが、それぞれ異なるアプローチを取ります。
- 脂質制限中の炭水化物摂取量:総カロリーの60%
- 糖質制限中の炭水化物摂取量:総カロリーの10%
脂質制限中でも、適度に炭水化物を摂ることで筋肉量を維持することができます。ただし、全体のカロリーを抑える必要があります。
また脂質を制限している際のタンパク質と脂質の摂取バランスは、タンパク質を30%、脂質を10%に保つよう心掛けましょう。
一方、糖質制限は食事中の糖質の摂取を極端に減らすことによって、体内のインスリンの分泌をコントロールし、脂肪の蓄積を抑えることが狙いです。
仮に1日の総カロリー摂取量が2,000kcalで、糖質制限が全体のカロリー摂取量の10%まで糖質を抑えることを目指す場合は以下です。
2000×0.1=200kcal→200÷4=50g 必要炭水化物量:50g
つまり2000kcalの場合は、1日に摂取する炭水化物量は50gを目指すことになるでしょう。また糖質制限中のタンパク質と脂質の摂取バランスにおいては、タンパク質30%、脂質60%の摂取が理想的です。
糖質制限中は糖質の代わりにエネルギー源として脂質が重要となるため、脂質を多めに摂取することが必要です。
二つのダイエットは炭水化物の摂取量に違いがあるので、きちんと確認してから取り組みましょう。
競技をする人(瞬発系)
瞬発系の無酸素運動種目(短距離走、走り高跳び、やり投げ、ウエイトリフティングなど)に必要な炭水化物の摂取量は、体重1kgあたり6gの炭水化物量が推奨されています。炭水化物を十分に摂取することで、短い時間での圧倒的なパフォーマンスが期待できます。
例えば体重70kgの選手が瞬発系の無酸素運動種目で競技する場合は以下です。
70×6=420g 炭水化物摂取量:420g
体重が70㎏の人は、420gの炭水化物を目安に摂取することをおすすめします。
短い時間で高いパフォーマンスを発揮するために、積極的に炭水化物を摂取しましょう。
競技をする人(持久系)
持久系の無酸素運動種目(長距離走、水泳、サイクリング、スキーなど)で最適なパフォーマンスを発揮するためには、体重1㎏あたり7~10gの炭水化物を摂取することが必須です。炭水化物はエネルギー供給の要となり、持続的な活動において役立ちます。
例として、体重60kgの選手が考えられる場合は以下になります。
- 最小限での摂取量:60×7=420g
- 最大での摂取量:60×10=600g
このように体重60㎏の選手の場合、1日の炭水化物摂取量として420~600gが目安となります。これは一般の摂取量よりも多いかもしれませんが、長時間の運動をサポートするためには欠かせません。
持久運動時のエネルギー不足を防ぐため、炭水化物の適切な摂取が鍵となります。
炭水化物の効果的な摂取タイミング
さて、次に炭水化物の摂取タイミングについて解説します。以下では、筋肉の成長をサポートするタイミングと、その際のおすすめ炭水化物について紹介します。
しっかりと心に留めて、是非実践してみてください。
筋トレ2~3時間前
筋トレの2~3時間前に炭水化物を摂取すると、トレーニングのパフォーマンスが向上します。2~3時間前に炭水化物を摂取することで、トレーニング中の持続的なエネルギー供給を確保されるからです。
さらに、直前に炭水化物を摂取するよりも時間をおいて摂ることで、消化が進んでいるため胃への負担を軽減することができます。
おすすめの炭水化物源としては、以下の食品が挙げられます。
- そば
- パスタ
- 玄米
- オートミール
上記の食品は低GI食品です。
※GIは「グリセミック・インデックス」の略で、炭水化物が血糖値への影響を数値で示すものです。
※低GIの食品は、摂取後の血糖値の上昇が緩やかであることを示しています。
低GIの炭水化物を摂取することでエネルギー供給がスムーズになり、トレーニングの持続性がアップします。
したがって、筋トレの2~3時間前に低GIの炭水化物を摂取することをおすすめします。これにより、トレーニングのパフォーマンスを最大限に引き出すことができるでしょう。
筋トレ30分~1時間前
多忙な日々で、筋トレを行う前にじっくり食事を摂る余裕がない人も多いことでしょう。そのような人々におすすめなのは、筋トレの30分~1時間前に炭水化物を摂取することです。このタイミングで炭水化物を摂ることで、即座にエネルギーが供給される利点があります。
具体的なおすすめの炭水化物源として、以下の食品が挙げられます。
- おにぎり
- バナナ
- エネルギーゼリー
- 和菓子
特に、筋トレ前には高GIの食品を選ぶことをお勧めします。
※高GI食品とは、血糖値を急激に上昇させる食品のことです。
高GI食品は血糖値をすばやく上昇させる特性を持ち、迅速なエネルギー供給に役立ちます。また、筋トレ直前の軽食にすることも大切です。大量の食事を摂ってしまうと、消化に時間がかかりトレーニングのパフォーマンスが低下する可能性があります。
食事の摂りにくい状況にある人々には、筋トレの30分~1時間前に高GIの炭水化物を摂ることを考慮してみてはいかがでしょうか。これにより、即座にエネルギーが補給され、トレーニングの効果も最大限に引き出せるでしょう。
筋トレ後3時間以内
筋トレ後に炭水化物を摂取することは極めて重要です。筋トレの直後から3時間以内に適切な炭水化物を摂ることで筋肉合成がより促進され、筋肉量を効果的に増やすことができます。傷ついた筋肉を素早く修復し、最適な状態に戻すことが肝要です。
おすすめの炭水化物源として、以下の食品が挙げられます。
- 白米
- 餅
- 食パン
- うどん
高い消化吸収速度を持つ高GI食品が、素早く栄養を供給する面で最適です。また、筋トレ後はグリコーゲンの回復において糖質が消費されるため、多くの炭水化物の摂取が求められます。ただし、過剰な摂取は脂肪蓄積につながる可能性があるため、適度な量に留意することが重要です。
筋トレ後の3時間以内に高GIの炭水化物を適切な量を摂り入れ、効果的な筋肉増強を促進しましょう。適切な栄養補給は、トレーニング効果を最大限に引き出す鍵となります。
炭水化物×タンパク質で筋肉合成アップ!
筋肉を効率的に増やすためには、炭水化物とタンパク質の組み合わせが重要です。筋トレや運動をすることで、筋肉にはダメージが生じます。ダメージを修復し、さらに大きな筋肉を作るためにはタンパク質が必要です。
一方、炭水化物はエネルギー源として働き、タンパク質の効果を最大限に引き出す役割があります。例えば、筋トレ後にプロテインを摂取するのは良いですが、プロテインと一緒にバナナや白米などの炭水化物も摂取すると筋肉の回復が早まり、筋肉の合成も促進されます。
以下の画像は、インスリン濃度の比較を示しています。
グラフから、タンパク質だけの摂取群や糖質だけの摂取群よりも、糖質とタンパク質を同時に摂取する群の方がインスリン濃度が高まることが分かります。
この結果からグリコーゲンを効果的に回復させるには、糖質だけでなく同時にタンパク質も摂ることが重要であることが示唆されます。
※グリコーゲンとは体内で作る炭水化物の一種であり、肝臓や筋肉に蓄えられる。
タンパク質と炭水化物の適切な摂取によって、筋肉の成長を最適化しましょう。バランスの取れた組み合わせを日常の食事に取り入れることで、より効果的に筋肉を増やすことが可能です。
炭水化物×タンパク質の摂取は、インスリン濃度を上昇させ、グリコーゲン回復を促してくれるため、筋肉の合成に効果的です。
なお、別記事で「プロテイン」について詳しく解説しているのでこちらも是非ご覧ください。
まとめ
最後に記事の重要なポイントをまとめます。
- バルクアップをしたい人の炭水化物の摂取量は、総摂取カロリーの55~60%を摂取する。
- ダイエットをしたい人の炭水化物の摂取量は、総摂取カロリーの60%を摂取(脂質制限)と総摂取カロリーの10%を摂取する(糖質制限)。
- 瞬発系の競技を行う人は、体重×6gの炭水化物量を摂取することが重要。
- 持久系の競技を行う人は、体重×7~10gの炭水化物量を摂取することが重要。
- 炭水化物の効果的な摂取タイミングは、筋トレ2~3時間前、筋トレ30分~1時間前、筋トレ後3時間以内。
- 炭水化物とタンパク質を同時に摂取することは、インスリン濃度を上昇させ、効果的なグリコーゲン回復を促してくれるため、筋肉の合成を効果的に促進する役割を果たす。
筋トレ効果を最大化するためには、適切な炭水化物の摂取量とタイミングを意識することが重要です。自身の目標や体質に合わせて、炭水化物の摂取を工夫してみてください。
エネルギー供給や筋肉合成の促進を通じて、効果的なトレーニングを実現しましょう。